特許事務所
弁理士が業として特許、実用新案、意匠、商標など特許庁における手続あるいは経済産業大臣に対する手続を行うための業務を処理するために開設する事務所である。弁理士又は特許業務法人でない者は、又はこれに類似の名称を用いてはならない。
弁理士個人による代理業務を補助するために開設する事務所であり、従来より法人格は認められていなかったが、平成12年の弁理士法改正により法の定める条件を満たすと『特許業務法人』として法人格を持つことが可能となった。ただし、実務的には日本各地に支店を開設して経営規模を拡大できるようになる他には別段のメリットもなく、特許事務所従来どおり法人格を持たない事務所も多い。
弁理士一人がいれば、特許事務所として活動できる。実際には、電話?FAX等の通信手段の他に、一般事務や経理事務をこなす事務員、パソコンとインターネットによる「インターネット出願端末」などが必須となる。弁理士が一人だけでは突然の急病などの際に業務に支障をきたすので、同様の個人事務所の弁理士と提携して、互いに何か不都合があっても業務がストップしないようにしている。 また、弁理士法による懲戒処分は、特許業務法人に対するものでなければ弁理士個人に対するものであるが[1]、個人事務所で弁理士が懲戒処分を受けると、事実上、業務が継続できなくなる。
かつては「弁理士報酬額表(特許事務標準額表、料金表)」が定められていたが、現在では顧客との交渉で報酬(費用)を決めることになっている[2]。定期的にある程度の量の仕事を約束してくれる顧客に対しては、料金割引などの特典をサービスすることが多い。また、近年、商標登録サービスにおいては、登録されなければ事務所費用を返金する成功報酬サービスも見受けられる。
実績あるいは出来高を反映した給与となっているところがほとんどで、年俸制を取る事務所もある。一年契約更新制としており、年俸で沢山もらう代わりに退職金がないところもある。所員の立場、つまり新人か指導する側かによっても、特許調査給与に反映されるところもある。
出願原稿作成が主業務の所員に対しては、出来高反映の給与のため、出勤?退勤時間の管理をせず在宅勤務を認める事務所もある。規模の大きい事務所では、フレックスタイム制を導入していることもある。残業時間は、事務所の仕事量や緊急対応などによって大きな波がある。技術者等で弁理士を目指している者は、勤務後の時間を受験勉強に充てるため、残業をしないこともある。弁理士試験合格者を多数輩出すると事務所のステータスが上がることもあり、所員の残業時間に配慮してくれるところも多い。
個人の事務所では所員はお手伝い扱いとして社会保険に加入しないところもあるが、弁理士の増加による間の競争激化に伴い、社会保険完備の事務所が多くなってきている。
一般企業のような、ある程度の雇用の安定性は担保されていない。実績が上がらない所員は簡単に解雇される。逆に力のある所員が事務所を見限り他の事務所に移ることも少なくなく、所員にとっても経営者たる弁理士にとっても実力主義の厳しい職場といえる。
一般企業とは逆に、即戦力による中途採用による所員で大半は構成される。新卒で採用してもらえるところも増えて来ているが、採用するには限界がある。「仕事をもらう」ことが全ての業界だからである。特許申請製造業のように「ものを作って売る」ことができないゆえに、「商品が大ヒットして会社に莫大な利益が入る」等という計算が一年を通じて全くできないのである。それゆえ会社自体に入る利益に限界があるため、ゼロから所員を育てる余裕が無い、というのが大半である。
事務所の名称中にさらに以下のような名称が付けられるが、以下の意味で付けられている。当然のことながら担当業務に従事していることが必要であり、むやみに使ってはならない。
かつては弁理士という職業がマイナーだったこともあり、どんな業態の事務所かがすぐわかるように、その名称を「特許事務所」とするのが主流であった。近年、弁理士という職業の認知度があがるにつれ、「弁理士事務所」という名称を冠した事務所も増えてきており、現存する事務所で早くにその名称を用いたのは「横浜弁理士事務所」である(日本弁理士会 弁理士名簿)。そもそも「弁理士」という言葉が正式に用いられたのは明治42年に施行された「特許弁理士令」からであり、それ以前の「特許代理業者登録規則」では、その名のとおり「特許代理業者」と呼ばれていたことから、「弁理士」という職業名の歴史よりも、「特許」という職場名の歴史のほうが古く、その名残が「特許事務所」が主として用いられていた理由の一つと考えられる。http://themathmachine.com/service/