2017/06/14
雛(ひな)の挿し餌で大切なこととは?
このコラムの筆者
藤原 秀将 キキ動物病院 獣医師・院長
大阪府立大学獣医学科卒業。府大在学中、獣医学に加え、樹木医学、心理学、脳科学、音楽療法などを学ぶ。大学卒業後、エキゾチックアニマル医学(鳥類医学含む)、東洋医療、武術、運命学など様々な観点で命の真実に迫ろうとする。2011年にキキ動物病院を大阪府堺市に設立。現在、獣医師として活躍しながら、次世代に自分が学んだことや志などを伝え残していくことに挑戦している。コラムでは「鳥さんと一緒に暮らすのは初めての方」もしくは「鳥さんの事をもっと知りたい方」に向けて執筆します。
雛(ひな)の挿し餌で大切なこととは?
こんにちは、獣医師の藤原です。
最初のコラムは、セキセイインコやオカメインコなど、小鳥の雛(ひな)の挿し餌について、初心者の方に知っておいてほしいことを紹介します。
雛から育てると・・・
小鳥さんと一緒に生活していくなら、基本的には雛(ひな)の段階からがいいです。雛のときから一緒にいると、すごくなついてくれます。
なついてくれると、手乗りになるのはもちろんのこと、手の中や服の中に隠れたり、頭の上や眼鏡の上で遊んだりしてくれます。すごくかわいいですよね。
一方、大きくなってから一緒になると、なつきにくいケースがあります。
雛の挿し餌は難しい?
ただし、雛から飼うときに、可愛さのあまり浮かれていてはいけません。
アメリカのカリフォルニアでは差し餌(さしえ)中の雛の販売が禁止されていたりします。それほど差し餌は注意が必要ということです。
とはいってもそこまで難しいわけではなく、油断してはいけない、ということですので安心してくださいね。
挿し餌で大切なことは、目の前の子にとっての「ちょうど良さ」を考えながら餌を与えることです。その方法をいくつかご紹介します。
挿し餌の「濃度」をちょうど良くしよう
濃すぎても薄すぎてもNGで、ちょうど良い濃さで挿し餌を作ってあげるのが大事です。
挿し餌が濃すぎると、そのうや消化管の中でつまってしまいます。
(ホースの中に泥水がつまるイメージです)
また、挿し餌が薄すぎると、水でお腹がふくれてしまいます。
Q:ちょうど良い濃さってどれくらい?
基本的にはコーンスープやポタージュのようなとろみがでるくらいの濃さです。
ただ、原則はその場その場で一番良い濃さは違います。
栄養が足りていなければ少し濃いめに調節しますし、あまり濃いと食べてくれない子もいます。
食べ方を見てがっつきすぎていれば少し薄めにしたり、量を減らしたりと調節します。
濃度を毎回同じに決めるのではなく、だいたいの濃さだけ決めておき、今の状態に合わせて調整することが大事です。
挿し餌の「温度」をちょうど良くしよう
熱すぎても冷たすぎてもNGです。雛のそのうはすごく薄くて弱いので、挿し餌の温度が熱すぎるとすぐに穴が開いてしまいます。
また、挿し餌の温度が冷たすぎても消化に負担がかかりすぎて消化管で渋滞(つまり)をおこしてしまいます。
ちなみに、鳥さんのご飯は一度温めたご飯を冷めてからあげない方がいいです。
空気中にはカビの元がいっぱい飛んでいますが、カビが温かい食べ物につくと時間がたつと少しだけ増えます。(増えるといっても目でみえないくらいです)
人間とは違い、この少しだけ増えたカビに鳥さんは負けてしまうのですから。
Q:ちょうど良い温度ってどれくらい?
40~42℃くらいを目指すといいでしょう。
インコの体温は42℃くらいと言われているので、それに合わせてあげるということです。
特に挿し餌が60℃以上になると見えないカビがいっぱいできちゃうので、要注意!
挿し餌の前に気をつけること
挿し餌をあげる前は必ずそのうを確認して、そのうに前の餌が残っていないかを確認しましょう。
そのうにご飯が残っているのに気づかずに餌をあげてしまうと、消化が追いつかず、そのうの中に未消化の餌がたまって固まってしまい、そのうち腐ってしまいます。
Q:そのうにご飯がたまっているか、どうやって確認するの?
そのうに人差し指で優しく触れてみてください。
ご飯をいっぱい食べた直後はそのうはいっぱいになっていることがわかるはずです。
一度そのうがご飯で膨らんでいる状態に指先で触れたら、逆にそのうにご飯がたまっていない状態もわかるようになると思います。
そのうについて
このコラムで度々登場する「そのう」についてですが、場所は大体このあたりです。
注意して欲しいのは、どんな鳥もすべて同じ位置にそのうがあるわけではありません。また、フクロウ、ガンカモ、オオハシ、カモメ、ペンギンなどの仲間には、そもそもそのうはありません。ただし、皆さんが普段ふれあうようなセキセイインコやオカメインコを始め、ほとんどの小鳥は同じような位置にそのうがあります。
ちなみに、そのうに入る挿し餌の量は
ブンチョウは1~2ml
セキセイインコは2~3ml
ラブバードは3~4ml
オカメインコは6~12ml
が目安となります。
今回は挿し餌で大切なことを紹介しました。
一番大切なのは、雛に限ったことではありませんが、ちょっとした変化を見逃さないようによく観察してあげることです。
挿し餌においては、「濃度」と「温度」、そして「そのう」に注意して、異常につながるサインを見逃さないよう、挿し餌中も注意深く観察してあげてください。気になることがあったら私たちのような専門家に積極的に相談しましょう。
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