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スズメについて
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 スズメから引用(2008.9.24 14:05)
スズメ(雀、すずめ・学名 Passer montanus )は、スズメ目・スズメ科[2]に分類される鳥類の一種。人家の近くに生息するなじみ深い小鳥である。
特徴
全長は約14〜15cmほどで、雌雄同色。成鳥は頭部は赤茶色、背中は褐色で黒斑があり、頬から腹にかけては白色をしている。くちばしの色は黒色であるが、幼鳥の時は淡黄色。頬にある大きな黒い斑点は遠くからも目立ち、これが他の近似種との区別点でもある。幼鳥は全体に色が淡く、頬の黒斑や喉の黒線がはっきりしない。
くちばしは短くて太い円錐形で、小さな餌をついばむために都合がよい構造となっている。地上では両足で飛び跳ねてすばやく移動する。鳴き声は一般的に「ちゅんちゅん」と表される。
ユーラシア大陸を中心に世界に広く分布する。草原、農耕地から都市部まで、およそ人の居住域付近ではごく普通に見られ、人間生活に強く密着した鳥である。逆に山野で人里から離れるとスズメは生息しない。
スズメは、非繁殖期には若鳥を中心とした群れを作って生活するが、春の繁殖期にはつがいで生活する。雨樋と屋根のすき間などに枯れ草で巣を作るので、この時期には枯れ草をくわえて飛ぶ様が見られる。また、ツバメなど他の鳥の古巣を利用することもある。広島では、スズメバチの古巣を利用した例も報告されている。人間が設置した巣箱も利用するが、この際は出入口の位置まで巣材を積み上げる習性がある。
木造家屋の屋根瓦の狭い空間に作られた直径5-6cm、深さ4cm程度の椀状に凹んだ巣。屋根の葺き替えの際に見つかった。卵の長径は1.5cm、短径は1cm程度で色は薄い茶色がかった灰色。巣の材質は主に枯草。瓦1枚の寸法は約30cm。
犬や猫などの毛も巣材として利用する。
犬や猫などの毛も巣材として利用する。
この他にも木の虚、屋根の軒の隙間や人の住んでいない家や集合住宅の換気扇カバーの中や煙突、プレハブの鉄骨の隙間や穴など直径 3cm または 2.5cm × 4cm ほどの隙間さえあれば入り込める。見た目には無理と思われるような隙間でも擦り抜けられるので、スズメの巣そのものは普段目に付かないことが普通だが、巣の真下付近には枯草などの巣材の残骸が散らかっていることが多いので、有無は確認できる。巣は地面近くには作らず、人の身長よりも高い位置に作ることが多い。
また、巣に人間などの外敵が近づくと「ヂヂヂヂヂヂ」と短く高い声で警告される。卵が無くてもある程度巣が完成している場合でも、頭上付近の高い場所から警告する。
食性は雑食性で、イネ科を中心とした植物の種子や虫を食べる。また、都市部に生息するスズメはサクラの花、パン屑・菓子屑や生ゴミまで、何でも食料にする。このようなタフな雑食性が、都会でも生き残る所以といえる。ヒナ鳥は、パンをぬるま湯で柔らかくしたものや植物性の練り餌(釣具屋で売っているフナや鯉釣り用の練り餌が安価で簡便である)で飼育が可能である。虫を追い掛けているときは、視点が獲物に集中し周りが見えていないこともあり、しばしば低空で道路に侵入し車に轢かれたり、建物のガラスに激突することもある。
穀物を食害することから、古来より農民に敵視されてきたが、繁殖期には虫を捕食して害虫を減らすうえ、雑草の種子も多く食べる。特に5、6月の繁殖期には、甲虫類や蛾の幼虫、イナゴなどを大量に捕食し、農作物の害虫を駆除する役割を果たしている。中国においては 1955年当時、「四害追放運動」として、ネズミ、ハエ、カとともに、スズメを撲滅させるという計画が実施され、大規模な人海戦術で、年に11億羽以上も捕獲したと言われている。しかしその結果、農作物の害虫が増え、全国的に凶作となった。このためか1960年にはスズメがその対象から外された[3]。日本では農家による限定的なスズメの駆除は認められており、狩猟対象鳥類28種のひとつに指定されている。捕獲したスズメは焼き鳥屋などで食用にされる。
アメリカ合衆国では、19世紀半ばにミズーリ州セントルイス市に移入された。広範囲に分布するイエスズメとは対照的に、現在では同市と隣接するイリノイ州の一部にのみ生息し、スズメの分布域は広がっていない。
日本での分布域
- 日本のほぼ全域に見られる。ただし、小笠原諸島では見られず、青ヶ島が伊豆諸島での最南端の分布域である。また太平洋の絶海の孤島である南大東島、北大東島にはスズメが大量に住んでおり、海を渡ってきた少数の個体から、温暖な気候により増殖したものと考えられている。
- 人間の生活に密接に関係し、人間が住み始めた集落にはスズメも居着き、逆に人間が離れ集落が無人になるとスズメも見られなくなるという傾向がある。
- 人間になじみ深い野鳥であるが、稲の害鳥とされてきた経緯もあり警戒心は強い。ただ近年都心では人間になじみ、日比谷公園などでは人目につくところに営巣したり、人が餌付けしたりする光景も見られるようになってきている。
スズメの集団行動
スズメは喉元の黒い部分が加齢と共に広がっていく。頬の黒い部分も喉の黒い部分同様に多少広がるようで、階級章とも年功序列の目印とも言えるこの模様により、エサを食べる順番や見張りなどの役割分担がスムーズに行なわれるようだ[要出典]。写真は公園の松の木の枝の窪みにエサを撒いた写真で、周りより高い位置に立って周囲を警戒している係。そのスズメの陰に頭だけ見えているスズメも周囲を監視している。左の二羽は後から来たスズメで、自分が割り込める場所を確認している。下でエサを啄ばんでいるスズメは見張り役がいるので安心して食事に専念できるのである。時折、後から来たスズメが食事中のスズメを追い払う様子も見られるが、階級の高い者が階級の低い者を追い払う教育のようなものと思われる。ちなみに、黒い部分が同程度の大きさだと時折喧嘩になることもあるが長くは続かない。
他の言語の事など
- スズメは、英語では「 Sparrow 」となる。ただし、Sparrow はスズメ科に分類される鳥の総称として用いられる。
- また American sparrow はスズメ科ではなくホオジロ科に属するあるグループを指す。 American sparrow は特定の種類を指さず、多くの種が含まれる。
- さらにペットとして飼われるベニスズメは、カエデチョウの仲間である。日本には元々いなかったが外来種として一部の地域で野生化している。
- 日本ではスズメを漢字で「雀」と書く。しかし標準的な中文(中国語)では「麻雀」と表記する。なお、中文ではスズメ科 (Passeridae) は「文鳥科」であり、中文の「雀科」はアトリ科 (Fringillidae) であったりと日本とは異なり、ややこしい。
文化
- 春先は苗の害虫を食べる益鳥である。ところが秋には稲のモミ米を食害する害鳥となる。スズメを追い払うため、「スズメ追い」「鳥追い」などという風習が各地にあり、それに関する民謡、民話なども伝えられている(舌切り雀など)。また、かかしもスズメ追いの道具として作られたものである。捕獲は夜間の寝床の藪の周囲に網を張り、大きな音を立てたり藪を棒などで叩いて飛び出したところを捕獲する。
- 追い払われる一方で、「神様のお使い」として慕われてもきた。
- スズメは鳥獣保護法で狩猟鳥に指定されており、地方や人によっては食用にもする。主に、中国、韓国が食用のスズメの産地である。京都伏見稲荷の門前の名物である。
- 都会では、猫が捕食者として雀を狙っており食物連鎖のバランスが意外にも取られている。
- 突然変異により羽毛の色素が無い「白スズメ」が稀に見られ、古来より瑞鳥とされてきた。聖武天皇や桓武天皇などが白スズメの献上を受けたという記録が残っている。
- スズメの語源については、「スズ」は鳴き声を、「メ」はカモメやツバメのように群れをなすことを指している。
- 「スズメぐらいの大きさのもの」ということで、名前に「スズメ」を冠した生物は多い。スズメガ、スズメバチなどは他の仲間より大きいという形容、逆にスズメノテッポウ、スズメノエンドウ等は小さいという形容である。
- スズメは中国の古典では小さな鳥の代表である。日本でも少ない金額に「スズメの涙ほどの」と前置して少ないことを形容する。
- 鳥ではないが、ガの仲間「スズメガ」の標準和名は「ガ」を省略するため「-スズメ」となる。フクラスズメというガもいるが、これはスズメガ科ではなくヤガ科である。
- 和文通話表で、「す」を送る際には「スズメのス」という。
- 雀色という色がある。
慣用句
- 雀の涙 - 「小さい」「ごくわずか」などの形容として用いられる。
- 雀百まで踊り忘れず - 幼い頃からの習慣は容易に変わらないことのたとえ。
- 雀の巣も構うに溜まる - 量が僅かでも積もり積もれば大きくなることのたとえ(「塵も積もれば山となる」と同義)。
- 雀の踊り足 - 筆跡の拙さの形容。
- 雀の千声鶴の一声 雀のようにつまらない千の声よりも鶴のような優れた物の一声が勝っている事のたとえ。